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「設計上の欠陥」とは、製造物の設計段階で安全性が欠けていた場合である。
「指示・警告上の欠陥」とは、製造物を使用し又は消費する際に発生する可能性がある危険について、それを消費者の側で予防、回避するための適切な情報が製造業者から与えられていないものである。使用説明書や注意書きが不備な場合がこれに当たる。

 

五 責任を負う者(責任主体)「法」による責任を負う者、即ち責任主体は、製造業者等である。
これには、「一、当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という)二、自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者三、前号に掲げる者の外、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(法二条三項)がある。
責任主体は、法二条三項一号の製造業者(製造業者及び加工業者、輸入業者)だけでなく、法三条二項二号の表示製造業者、法三条二項三号の「実質的な製造業者とみなしうる表示者」も含まれる。
例えば、大手デパートやスーパーなどの販売業者が、自主的に企画した商品に自社ブランドを付けて販売する場合などは、製造元として製造業者が明示されていても、販売元である大手デパートやスーパーなどに「表示製造業者」又は「実質的な製造業者とみなしうる表示者」として、「製造物責任」を追及することが可能となる。

 

六 損害の範囲
「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により、他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる、但し、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りではない。」(法三条)製造物の欠陥による損害として、人損(生命、身体に対する侵害による損害)、物損(物の物理的な損壊による損害)がある。
但し、当該欠陥品だけしか損害がなかった場合は、法の対象にならない。これは、民法上の契約責任を追及すればよいという考えからである。

 

七 免責事由
「前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠債の責めに任じない。
(一)当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
(二)当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。」(法四条)法は、免責事由として、開発危険の抗弁(法四条一号)と部品・原材料製造業者の抗弁(法四条二号)を掲げている。
「開発危険の抗弁」は、商品を流通においた時点における科学・技術知識の水準によっては、そこに内在する危険を発見することが不可能な危険についてまで製造業者等に責任を負わせることとすると、技術革新の停滞が起きること等から、認められたものである。本条の「科学技術水準」は、製造業者からみて、入手可能な最高の科学技術水準をいうと解されている。
「部品・原材料製造業者等の抗弁」は、これは、設計上の欠陥については、設計を指示した者に責任があるとする考え方からであろう。

 

八 期間の制限
製造物責任法に規定する損害賠償請求権は、被害者側が、損害及び賠償義務者を知った時から三年間、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年間で時効により消滅する(法五条一項)。
民法七二四条の不法行為による損害賠償請求権の時効の不法行為の時から二〇年という期間が一〇年になっている。これは、技術革新、製造物の通常使用期間、検査記

 

 

 

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